声明の分割への抗議

中央委員会・中央統制委員会8月合同総会における第3の演説

トロツキー/訳 西島栄

【解題】1926年の10月16日の声明と同じく主流派との一定の妥協と譲歩の産物である8月8日の声明は、反対派の指導者であるトロツキーとジノヴィエフの中央委員会からの即時除名を回避することに役立った。しかし、この8月8日の声明は、10月16日の声明と違って、単純に妥協と譲歩の姿勢を示すのではなく、後半部分では逆に主流派に対する反撃をも行なうものであった。そのため、主流派は、この声明をそのままでは発表できないとし、主流派への反撃を意図した後半部分を前半部分と切り離し、後半部分のみを『プラウダ』に発表することにした。こうした措置は、声明の政治的性格を大きく歪めることにつながり、反対派の政治姿勢に対する誤解を生むものに他ならなかった。反対派指導者はこの合同総会において、そうした措置に対する反対の姿勢を示したが、総会の決定という形でこの分割が強行されたため、それに従わざるをえなくなった。この演説はこの問題を扱ったものである。

 Л.Троцкий, Речь на заседании Объединенного пленума ЦК и ЦКК. 9 августа, Архив Троцкого: Коммунистическая оппозиция в СССР: 1923-1927, Том.4, 《Терра−Терра》, 1990.


 トロツキー 同志オルジョニキッゼは、われわれの声明を2つの部分に分けることを義務づけた総会の直接の決定(会場が騒然)が存在していると説明した。もしこのような直接の決定が存在するのだとすれば、われわれはこの決定に、他のすべての決定に対して同様に従うだろう。

 会場からの声 存在するのは総会からの提案だ。

 トロツキー 総会からの提案に対しては、それはわれわれにとって受け入れがたいと答えたし、それが受け入れがたい理由についても説明した。それが受け入れがたいのは、この問題においては完全な正確さと明快さが必要だからである。声明を2つの部分に分けるということが総会の決定なら、それに対してわれわれは、他のすべての決定に対してとまったく同じ態度をとることしかできない。しかし、その際、われわれはいつでもどこでも、次のことを行なう権利のみならず義務をも自分に留保するだろう。

 会場からの声 街頭のあらゆる角でもな!

 会場からの声 ヤロスラヴリ駅でもだ!

 トロツキー すなわち、党規約によって許されるかぎりで、正常な党生活がわれわれにこのことを許すかぎりで、われわれはこう説明する。われわれの声明の第1の部分――それは諸君の決定によって人為的に第2の部分から切り離された――に含まれている義務を、われわれは、これが急速とはいかないまでも本格的な成果をもたらすとの希望を抱いて実行するが、それが本当に成果を収めうるのは、われわれの努力が一方向的なものではない場合のみであり、わが党の運命を、少数派すなわち反対派よりもはるかにその手に握っている同志たちがその懐に石を隠し持っていない場合だけである、と。同志スターリンがこの場で、反対派の言葉を額面通り信じる理由はない、なぜなら反対派はその懐に石を隠し持っているからだと表明したのだから、このような発言をする権利はなにも彼だけにあるのではないだろう。(騒然)これまで闘争がなされてきたという事実は、これからの時期においてもその痕跡を党にとどめないわけにはいかないし、この痕跡を一掃することができるのは、両方の側に善意が存在する場合のみである。

 会場からの声 それは取り引きか?

 会場からの声 党は1つだ。

 会場からの声 2つの側など存在しない。

 トロツキー これは「取り引き」ではない。問題となっているのは両方の側の善意である。(騒然)

 党が1つであるというのはまったく正しい。しかし、もし「取り引き」相手としてではなく一個の事実として反対派が存在しないのだとすれば、われわれが今話しているすべての問題も存在しないであろうし、反対派の問題を議題にする必要もなかっただろう。反対派は取り引きしているのではなく、反対派によって設定された問題に答え、自らの見解を表明しているのである。この枠内で、私は多数派と少数派について語っているのである。

 したがって、われわれは、自らの声明の中で表明した見解を全面的に保持するし、この声明の2つの部分は一個の全体を構成している。声明の2つの部分を区別することに同意するのかどうかと諸君が尋ねたとき、われわれは同志カーメネフを通じてこう述べた。いや、そうすることはできない、そんなことをすれば党内に幻想をつくり出すことになり、党内に誤解を持ち込むことになってしまう、と。われわれの声明が明快ではっきりとしたものであるにもかかわらず、それを2つに分割することを義務づけた決議を採択するのを、諸君は合目的的なものとみなした。われわれにこのような分割を義務づけた合同総会の決議に対して、それに従うという以外の道はわれわれにはない。(騒然)

1927年8月9日

『トロツキー・アルヒーフ』第4巻所収

新規、本邦初訳

 

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