平等について

トロツキー/訳 西島栄

【解題】本稿は、合同反対派の公然たる闘争が始まる直前に、ロシア内部の平等の問題について書いた覚書である。この中でトロツキーは、ロシア共産党の幹部党員のあいだで、平等を希求する低賃金労働者に対する「不注意な、いや敵対的でさえある態度がますます広がっている」ことに警告を発している。本邦初訳。

 Л.Троцкий, О РАВЕНСТВЕ, Архив Троцкого: Коммунистическая оппозиция в СССР: 1923-1927, Том., 《Терра-Терра》, 1990.


  ネップ導入の直前、レーニン指導下の中央委員会は次のことを強調した。

 「より大きな平等を実現するための闘争に全党の注意をもう一度、さらにもう一度向けなければならない。まず第1に党内での、第2にプロレタリアートの内部での、したがって全勤労大衆の内部での平等であり、最後に第3に、さまざまな部署およびさまざまな活動家グループ、とりわけスペッツ[ブルジョア専門家]および幹部活動家と一般大衆とのあいだの平等である」(「1920年9月のロシア共産党全国協議会決議」より)。

 もちろん、ネップの導入は、経済ばかりではなく日常生活においても大きな変化をもたらし、平等にマイナスに作用する諸条件をつくり出した。しかしだからといって、党が、他の分野と同様にこの分野においても、ネップのブルジョア的傾向に黙って拝跪してよいということにはならない。

 したがって、ネップの導入から5年も経った1925年の終わりになって、より大きな平等の問題を再び日程にのぼせようとする試みがなされたときに、党の多くの指導的活動家からきわめて敵対的な態度に出くわしたことは、きわめて危険な徴候である。しかしながら、人民大衆の中では、勤労者グループの中では、党それ自身の中では、より大きな平等という問題は議事日程から除かれないし、除かれえないものなのである。

 わが国の官僚におけるほど「高い」レベルまで達しておらず、それゆえ平等を夢見ている労働者の中の未熟練層および低熟練層、および「無学な大衆」に対する、党幹部の不注意な、いや敵対的でさえある態度が、ますます広がっている(この点に関してなされた同志ウグラーノフの演説はとくに問題である)。賃金のより低い労働者層に対するこのような態度は、大衆からの遊離と日和見主義の典型的な徴候であり、ネップの諸条件に抗してより大きな平等を系統的に実現する問題を実践的に立てようとすることへの不熱心さもまた同じである。

エリ・トロツキー

1926年7月11日

『トロツキー・アルヒーフ』第1巻所収

新規、本邦初訳

 

トロツキー研究所

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1920年代後期