「有色」人種プロレタリアにもっと接近せよ!

トロツキー/訳 酒井与七・志田昇・西島栄

【解説】この文献は、南アフリカ共和国の黒人労働者からアメリカ共産主義者同盟に宛てられた手紙について論じたものである。この文献には、最も抑圧された黒人労働者に対するトロツキーの並々ならぬ共感の念が示されている。

 本稿は最初、パスファインダー社の『トロツキー著作集』所収の英訳から翻訳されたものが『トロツキー研究』第31号に掲載され、それがこのサイトにもアップされたが、その後、『反対派ブレティン』第28号にロシア語原文があることがわかったので、それにもとづいて修正された。

L.Trotsky, Closer to the Proletarians of the“Colored”, Writings of Leon Trotsky(1932), Pathfinder, 1973.
Л.Троцкий, Ближе к пролетариям "цветных" рас!, Бюллетень Оппозиции, no.28, 1932.


[英語版編者注]ここでトロツキーが触れているヨハネルブルグからの手紙はアメリカ共産主義者同盟に宛てられたもので、左翼反対派への加盟を申請することや左翼反対派の文書を配布することなどといった署名者たちの決定を述べたものである。

  国際書記局へ(アメリカ共産主義者同盟全国委員会にも写しを送る)

 親愛なる同志たち!

 ヨハネスブルグの黒人同志の組織から送られてきた1932年4月26日付の手紙の写しを受け取った。この手紙には巨大な徴候的意義があるように思われる。左翼反対派(ボリシェヴィキ・レーニン主義者)は、世界プロレタリアートの最も抑圧された層、したがって何よりも黒人労働者の旗じるしになることができるし、そうならなければならない。私はどのような根拠にもとづいてこのような主張をするのか?

 左翼反対派は、現在、世界で最も首尾一貫した、最も革命的な潮流である。労働者運動におけるありとあらゆる官僚的傲慢に対する鋭い批判的態度ゆえに、左翼反対派は労働者階級と勤労者全体の最も抑圧された層の声に、特別に注意深い態度で耳を傾けることができる。

 左翼反対派は、スターリニスト機構のみならず、世界のすべてのブルジョア国家からの攻撃にさらされている。この事実――それは、あらゆる中傷にもかかわらず、しだいに大衆の意識に入りつつある――のおかげで、左翼反対派は世界の労働者階級の最も抑圧された層の熱烈な共感をますます惹きつけるにちがいない。このような観点からして、南アフリカの同志たちからわれわれに寄せられた通信はけっして偶然のものではなく、深い徴候的な意義を持っているように思われるのである。

 24人の署名(さらに「その他」と記されている)の付されたこの手紙の中で、南アフリカの同志たちは中国革命の問題に対して特別の関心を示している。この関心はまったく正当なものであることを認めなければならない。なぜなら、最も基本的な民族的権利と人間的尊厳のための闘争を遂行しなければならない被抑圧民族の労働者大衆こそが、「民主主義独裁」に関するスターリニスト官僚の支離滅裂な教義の報いを受ける最大の危険にさらされているからである。この偽りの旗じるしのもとで、国民党流の政策、すなわち勤労大衆に対する自国の「民族」ブルジョアジーによる卑劣な欺瞞と野放図な弾圧という政策はいぜんとして、勤労者解放の事業に最大級の災厄をもたらしかねない。多くの国における争う余地のない歴史的経験に裏づけられた永続革命の綱領は、アフリカの黒人プロレタリアートの解放運動にとって指導的な意義を持ちうるし、持たなければならない。

 ヨハネスブルグの同志たちには、すべての重要問題に関する左翼反対派の見解を十分に知る機会がこれまでのところなかった。しかし、こうした事情は、われわれが今すぐにこれらの同志とできるだけ接近し、彼らがわれわれの綱領と戦術のもとに結集するのを同志的に支援することを妨げるものではない。

 たとえば、すでにさまざまな組織のメンバーであるパリ、ベルリン、ニューヨークの知識人10人がわれわれの隊列に入りたいと言ってきたなら、私は次のような助言を与えるだろう――すなわち、彼らをすべての綱領的問題について多くのテストにかけなければならないし、彼らを雨にさらし、太陽のもとで乾かし、そのうえでさらに慎重に審査し、おそらく1人か2人を受け入れるべきだろう、と。

 大衆と結びついている10人の労働者がわれわれのもとにやってくるとき、事態はまったく違う。小ブルジョア・グループとプロレタリア・グループに対するわれわれの態度の違いについて説明する必要はない。しかし、プロレタリア・グループがさまざまな人種の労働者が混住する地域で活動しているにもかかわらず、そのグループが特権的民族の労働者だけで構成されているとすれば、私はそのグループを疑いの目で見るだろう。われわれが相手にしているのは労働貴族ではないだろうか、このグループは積極的または消極的な何らかの奴隷所有者的偏見に感染してはいないだろうか、と。

 だが、黒人労働者のグループがわれわれに近づいてくるとき、事態はまったく違う。このような場合、いまだ意見の一致が見られないとしても、私はこのグループと合意に達することができるものと前もってみなす用意がある。なぜなら、黒人労働者は、その置かれている状況からして、誰かをおとしめたり、誰かの権利を抑圧したり奪ったりしないし、またそうすることができないからである。彼らは特権を求めないし、国際革命の道を通じて以外に地位を向上させることができないからである。

 われわれは黒人労働者、中国人労働者、インド人労働者など有色人種の大海のすべての被抑圧者の意識に至る道を見出すことができるし、見出さなければならない。人類発展の決定的な言葉は彼らのものなのである。

プリンキポ、1932年6月13日

『反対派ブレティン』第28号

『トロツキー研究』第31号より

 

トロツキー研究所

トップページ

1930年代前期