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 『ボリバ(闘争)』の創刊

『ボリバ(闘争)』の創刊号

(『ボリバ』は非分派派の共同の機関誌として創刊され、トロツキーがその中心であった)

N・N・ジョルダニア(1869-1953)

(グルジア・メンシェヴィキの傑出した指導者で、『ボリバ』の主要な寄稿者の一人)

 「本冊子によって発行が始まる雑誌の名前は『ボリバ(闘争)』である。

 この言葉は、全世界の発展の推進力、人類史の基本的事実を表現している。巨大な諸力の盲目的な闘争の中で、われわれの太陽系は形成された。絶え間ない生存闘争の中で、無尽蔵の数の植物および動物が有機的世界で発展を遂げた。人類は闘争の中で、また闘争を通じて、動物界から抜け出した。労働の道具を身につけることで、人類は何十倍ものエネルギーをもって、自然の盲目的諸力との闘争を遂行した。いや、闘争したのは自然に対してだけではない。人間と人間との闘争は、われわれの過去の年代記全体の本質を構成しており、今日の歴史時代の主要な内容に関しても同じである。

 人間社会は、文化発展の最初の時代を抜け出すやいなや、諸階級に、すなわち社会経済におけるそれ自身の役割によって統合された社会集団に分裂した。土台としての階級的利害の統一性の上に、人々をまとめる種々の階級的信念や希望や理想が積みかさなかった。そして、こうした階級的利害や理想のために、非和解的な闘争が繰り広げられたし、現在も繰り広げられている。こうした源泉から、血ぬられた暴力の諸行為も、偉大なヒロイズムの偉業も、生じているのである。

 国民経済の中で自分の取り分を確保するための、および、社会の中で影響力と支配権を獲得するための諸階級の闘争は、原則でもなければ綱領でもない。それはあからさまな事実であり、全人類史の厳然たる土台である。

 政党、社会理論、政治文献などが階級闘争をつくるのでもなければ、引き起こすのでもない。それらはただ、階級闘争のうちに、思想的明確さと組織的な体系性を持ち込むにすぎない。

 支配階級および有産階級は、長年月かけて形成してきた、それ自身の確固とした観点というものを持っている。教会、国家、学校、家族、監獄、裁判所など、ありとあらゆる場面で、社会意識が系統的に形作られ、階級制度の必要に合致した見解が身につけさせられる。社会的、政治的、哲学的、宗教的見解というものは、しばしば不変のものであるとみなされているが、それはただ既存のものを無批判に受け入れているからにすぎない。

 無産階級は常に、富の源泉から切り離されているだけでなく、文化の源泉からも切り離されている。労働と貧困の重い鉄鎖に加えて、彼らは必然的に、偏見と迷信の重い鉄鎖をも引きずってきた。

 プロレタリアートは、最も抑圧された階級であるというだけでなく、解放に向けて努力せざるをえない階級でもある。

 プロレタリアートはその前衛を筆頭に、測りしれないほどの偉大さを帯びた全世界的・歴史的課題を自らの前に立てる。すなわち、階級的奴隷化に立脚し敵意と羨望と悪意が蔓延した人間社会全体を、兄弟的な協同性、労働と快楽の平等という原理にもとづいて再建することである。しかし、内部世界において必要な変化が起きないかぎり、外部世界において偉大な変化を引き起こすことはできない。意識を変革することなしに、存在を変革することはできない。

 ここでわれわれの前に巨大な活動舞台が開かれている。プロレタリアートは、過去から受け継がれた社会観をそのまま受け入れることはできない。なぜなら、こうした社会観は、その最後の結論においては、プロレタリアートとその未来に対立するものだからである。労働者は、過去から受け継がれ押しつけられた伝統的な観点を絶え間なく批判することを通じて、そして、過去の蓄積された経験を絶えず検証することを通じて、自ら自分自身の見解をつくり上げなければならない。自分自身の幸福のみならず、全人類の幸福の鍛冶場となることを望むプロレタリアは、何よりも、自分自身の世界観の鍛冶場とならなければならない。プロレタリア思想の偉大な鍛冶場において、われわれの『ボリバ』は、かまどの1つを占めたいと思っている。

 技術の分野における新しい成果や発見、生産の新しい編成形態、自然に対する人間の力の増大、資本主義社会の内的構造、新しい階級の勃興、古い階級に対するその新興階級の闘争、国家の諸形態、法の諸規範、イデオロギーの発展と闘争――宗教の教義、哲学理論、文学的・芸術的諸流派――、これらのあらゆる分野において、現代のプロレタリアは、自らの批判的見解を持たなければならないし、その獲得物と成果によって自らの意識を豊かにしていかなくてはならない。そして、いっさいの中心には常に、自分自身の集団的闘争が、そのあらゆる種類の現象および形態とその努力の内的統一を通したそれが、来なければならない。自然の盲目的力を制御するためには、生産的労働者にとって、物的財の創造者にとって、現代技術という武器が必要であるように、社会主義労働者にとっては、複雑な実生活を理解してその中で自らの位置を占めるためには、思想的武器、方法が必要である。

 思考する労働者に対し、このような方法を与えるものこそマルクス主義の理論である。『ボリバ』は、マルクス主義的思考活動の機関紙である。」(「『ボリバ』編集部より――巻頭言」『ボリバ』第1号より)

 

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